| 日本とオーストラリア 2つの祖国を持つ子供たち | ||||||
| ■世情と共に変化するオーストラリアで暮らす人々 近年、様々な世情を反映して、オーストラリアに来る日本人の種類や質が変化してきていると言われている。 日本の不景気を受けて、企業による駐在員が減り、代わりに日本を出て、新天地で生活しようとする「移民」が増えている。また、以前はオーストラリアといえば「リタイア後の生活をのんびり営む」というイメージが強かったが、最近はその柔軟な移民受け入れプログラムが見直され、子供に教育を施すために家族で移住、または中・長期滞在をする家庭も増えてきている。 その代表格が「親子留学」だ。国際的な視野と語学センスを磨くために、毎年、大勢の親子が渡豪してくる。「小学生留学」の場合、公立学校は原則として「地元の子供たち」のための学校なので、学生ビザの取得はできない。私立学校の場合は、学校長の承認があれば、子供は学生ビザが取得でき、留学生として学ぶことができる。 彼らの多くは母親と子供たち(6〜15歳以下の義務教育中の子供が最も多い)のみの渡豪で、父親は日本に残っていることが多い。当然、教育熱心な母親が多く、その子供たちは、平日は地元の学校に通い、その上、テニスやゴルフ、乗馬、ボーイスカウトなどの様々なクラブにも所属。さらに、日本語補習授業校に通ったり、通信教育や家庭教師の下で日本の教育カリキュラムに沿った勉強も欠かさないなど、過密スケジュールをこなしている。 また、現在日本では「早期英才教育」も盛んで、0〜5歳児の「幼稚園(保育園)留学」もある。この形の留学は、以前は親が学校に通う間、子供を預けるという「保護者中心型」が主流だったが、ここ数年は子供を英語環境の幼稚園に通わせたいという理由の「子供中心型」が大変増えているという。幼稚園児の場合、子供に対してビザは発給されないので、保護者が観光、学生などのビザを取得し、その「扶養家族」として子供に滞在許可が下りる形になる。 それらの保護者に渡豪の理由を尋ねると「早い時期から国際的な環境に触れて、より広い視野を養って欲しいから」という回答が目立つ。そこには、加熱する早期英語教育の波や受験戦争を背景に、日本国内だけの教育では養いきれない「国際感覚」を養うために、渡豪してきている保護者たちの切実な願いを感じ取ることができる。 |
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| ■オーストラリアの義務教育システム ここで、オーストラリアの教育シムテムを簡単に説明しておこう。オーストラリアの義務教育期間は6〜15歳(TAS州のみ16歳まで)で、州ごとに若干システムが違う。クイーンズランド州では、初等教育(Primary School)の7年間と、中等教育(Junior Secondary School)の3年間が義務教育。後期中等教育(Senior Secondary School)の2年間は、その後の進路を決めるまでの準備学習期間となっている。そして、07年より、初等教育前に通う幼稚園(Pre-School)が新たに義務教育化されるという。 日本から転入する場合、12歳以下は、英語力に関する規定がないため、年齢に応じた学年に編入できる。ただし、日本と違って12月時の年齢で学年が決まる。早生まれの子供に関しては学校との交渉次第となっている。また、入学は各学期初日であれば、学年途中からでも転入学が可能と受け入れ態勢はかなり柔軟だ。中等教育から、積極的に「選択授業」が設けられ、子供の興味、嗜好に合わせたカリキュラムを組めることも特徴の1つ。 また、日本の教育現場で帰国子女の受け入れ枠も広がっており、海外で2年以上滞在した子供は、日本に帰国すると「帰国子女」とされ、転編入学に対しての優遇処置もある。オーストラリアの学校の単位がそのまま認定され、年齢に応じた学年に転入することも比較的容易になってきており、高校・大学への進学に関しても、門戸はかなり広がっている。 |
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| ■自我の確立を視野に入れた長期的な子供の教育計画を 一見、良いこと尽くしに見えるオーストラリアの教育システムだが、子供の毎日の送迎や父兄会への参加など、親の担当する部分も多く、周囲の理解、協力が必要となる。また、大前提として、こちらの教育システムは「オーストラリア人のためのもの」であり、「移民」のためのものではない。普通に学校へ行き、生活していれば、その子供はオーストラリアの国歌を歌い、英語でものを考え話す「オーストラリア人」になるということを忘れてはならない。 こちらで生まれた子供を持つ日本人の親が直面する問題の1つが「日本語教育」だ。日本人の血を受け継ぐ者として、子供に「日本語」を教えるべきなのか、それともオーストラリア人として「英語」を話せればいいのか…特に、両親の国籍が異なる国際カップルや周りに日本人の少ない地域に暮らす人にとっては深刻な問題だ。 「多民族国家」として名高いオーストラリア。その「実態」はどうであろうか? 「オーストラリア人」と一口に言っても、白人系、ヒスパニッシュ系、アジア系などと、それぞれ民族ごとのコミュニティがあり、それらは上手く「共存」はしているが、決して交わることはない。個人同士は「友人関係」を結ぶことはできても、異なるコミュニティに真に受け入れられることは滅多にない。そうするには、完全に「日本人」であることを捨て去らなければならず、それはとても難しいことだからだ。親しくなればなるほど、その「見えない壁」の存在に気が付くことになる。 では、この「壁」の正体は一体、何なのであろうか? それは「自分はどこに所属しているのか?」という帰属意識、自己認識(アイデンティティ)の差によるものではないか。人間は、群れを作る動物であり、多かれ少なかれ「社会」に帰属し、その一員として生きていく。そして、使用言語とアイデンティティには密接な関係がある。「社会」とは、共通の言葉を通して、共通の文化、生活圏を作り出し、共に生活する集団のことを指すからだ。 子供に「日本語を教えるかどうか?」と悩む前に、まずは「自分の子供の祖国はどこなのか?」を決める必要があるだろう。「自分は●●国人である」という自覚がないということは、自我がないのと同一であり、結局、その子供は精神的に不安定な人間になってしまう。子供は両親も生まれてくる国も選べない。だからこそ、親として、まず子供にしてあげることは、この「自分作りの基礎段階を助けること」ではないだろうか? |
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| 1番重要なのは 両親が迷わないこと 人間を形作る核となる「自我」の確立に、幼少時の教育は絶大な影響をもたらします。この時期は、何語を話すというよりも、あいさつなど、生活の基本や礼儀作法などを通じて「自分はどこに所属するのか?」「自分のものを考える際のベースは何か?」という基礎を作ることが重要になります。従って、両親はまず、どこに生活(文化)のベースを置くかを選択しなければなりません。それは日本であっても、オーストラリアであっても構わないのです。1番重要なのは、1度決めたら迷わないこと。両親の方針が揺らぎ、変更を重ねれば重ねるほど、子供は自我の確立ができない、薄っぺらな存在になってしまいます。 |
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| 教育相談窓口 ● クイーンズランド日本語補習授業校 ブリスベン校:07-3870-0360(火・木) ゴールド・コースト校:07-5531-6661(水・金) ● ケアンズ日本語補習授業校:cairns_japan@hotmail.com P.O.Box 4850 QLD 4870 |
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| <監修・取材協力> クイーンズランド日本語補習授業校 永島昭雄 橋本健二 安藤由香里 藤国際幼稚園 藤原一昭 |
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| (この記事は2005年10月号のバグースマガジンに掲載されました) | ||||||
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